メルボルンで保育(チャイルドケア)を学ぶとき、進路は大きく2つに分かれます。ひとつは専門レベル(Certificate III・Diploma)を修了して保育士(Early Childhood Educator)として現場に立つルート。もうひとつはBachelor of Early Childhood Education(幼児教育の学士)を修了して幼児教育の教員(Early Childhood Teacher/ECT)を目指すルートです。
同じ「保育」でも、この2つは就ける職種・必要な登録・そして永住権(PR)までの道のりが大きく違います。「保育は永住しやすいと聞いた」という情報だけで学校を決めてしまうと、卒業してから軌道修正が難しくなることもあります。このページでは、両ルートの違いを比較表とルート図で整理します。

まず結論:2つのルートの違い早見表
| 比較項目 | ① 専門レベル(Cert III・Diploma) | ② Bachelor of Early Childhood Education |
|---|---|---|
| 学ぶ場所 | TAFE(州立専門学校)・私立専門学校 | 大学・Higher Education機関(TAFEの学士課程を含む) |
| 標準的な期間 | Cert III 約6か月〜1年 + Diploma 約1〜1.5年(パッケージで約2年が主流) | 約3年(Diploma保有者は単位認定で短縮できる場合あり) |
| 学費の目安 | 年間 約A$10,000〜18,000(学校差が大きい) | 年間 約A$25,000〜35,000(大学・コースにより差が大きい) |
| 卒業後の主な職種 | 保育士(Educator)、ルームリーダー、将来的にセンター長(Centre Director/Manager) | 幼児教育教員(Early Childhood Teacher/ECT)、キンダーの担任 |
| 必要な登録・資格 | ACECQA承認資格 + Working with Children Check、応急手当(First Aid)など | 上記に加えて州の教員登録(ビクトリア州はVictorian Institute of Teaching/VIT) |
| 英語の要件 | 入学時は IELTS 6.0 程度が一般的。卒業生ビザ(485)は IELTS 6.5(各バンド5.5以上) | 教員登録・技能審査でさらに高い水準が必要。VIT は IELTS Academic でスピーキング・リスニング8.0/リーディング・ライティング7.0。総合スコアは問われず、各項目で基準を満たす必要があります |
| 卒業生ビザ(485) | Post-Vocational Education Work stream(18か月/MLTSSL掲載職業+技能審査が条件) | Post-Higher Education Work stream(学士は原則2年) |
| 技能審査(Skills Assessment)の機関 | 管理職系(Child Care Centre Manager など)は ACECQA | Early Childhood (Pre-primary School) Teacher は ACECQA(2024年12月7日にAITSLから移管) |
| ポイント制での学歴点 | AQF Diploma/Certificate III〜Advanced Diploma=10点 | 学士以上=15点 |
| 現実的な永住ルート | 雇用主指名(482 Skills in Demand → 186)が中心。州指名は職業と州の要件次第 | ポイント制(189/190/491)が使いやすく、雇用主指名(186)も併用可 |
| 向いている人 | 早く働きながら学びたい/費用と期間を抑えたい/まず現場経験を積みたい | 時間と予算をかけてでも永住の選択肢を広げたい/すでに英語力が高い/教員を目指したい |
| 注意点 | Educator(保育士)という職種自体は技術移住の対象になりにくい。管理職は実務・管理経験が前提 | 英語要件と教員登録のハードルが高い。登録が取れないとECTとして働けない |
ルート①:Certificate III → Diploma(専門レベル)で保育士になる
もっとも一般的なのが、CHC30121/CHC30125 Certificate III in Early Childhood Education and Care から CHC50121/CHC50125 Diploma of Early Childhood Education and Care へ進むパッケージです。合計で約2年になるよう組むのが主流で、学内学習と保育施設での実習(プレースメント)を組み合わせて学びます。
ルート②:Bachelor of Early Childhood Education(学士)で教員を目指す
学士課程は約3年。修了後は幼児教育教員(Early Childhood Teacher/ECT)として、キンダーガーテンや長時間保育施設の就学前プログラムを担当します。保育士とは別の職種として扱われ、給与水準も、そして永住ルートの選択肢も変わります。

第3のルート:Diplomaから学士・大学院へつなぐ
「まず働きながら収入を得たい。でも将来は教員も視野に入れたい」という方には、Diplomaを取って現場に出てから学士に編入する組み合わせが現実的です。Diplomaの単位が認定されれば学士の期間を短縮できることがあり、働きながらパートタイムで学ぶ人もいます。
また、すでに日本で4年制大学を卒業している方は、学士をもう一度取り直すのではなく Graduate Diploma in Early Childhood Teaching(大学院レベルの教員養成課程)に進む道があります。メルボルンでは Laurus Higher Education などが開講しています。ただし1年課程のみではオーストラリアでの就学92週という485の要件を満たさないため、卒業後のビザ設計を別途組む必要があります。
費用と期間のモデルケース
下記は組み合わせのイメージです(学費は学校により大きく変わるため目安です)。モデルDは1年課程のみだと485の就学要件(92週)を満たさない点にご注意ください。
| モデル | 学習内容 | 就学期間の目安 | 学費の目安 | 主に狙うビザ |
|---|---|---|---|---|
| A:最短で現場に出る | 英語学校 + Cert III + Diploma | 約2年〜2年半 | 約A$25,000〜38,000 | 485(VET) → 482 → 186 |
| B:学士まで一気に | 英語学校 + Bachelor of Early Childhood Education | 約3年半〜4年 | 約A$85,000〜115,000 | 485(Higher Ed) → 189/190/491 |
| C:Diploma経由で学士へ | Cert III + Diploma + 学士編入(単位認定あり) | 約4年〜4年半 | 約A$70,000〜100,000 | 485 → 189/190/491 または186 |
| D:日本の学位を活かす | Graduate Diploma in Early Childhood Teaching | 約1年〜1年半 | 約A$25,000〜40,000 | 485 → 189/190/491 |
どちらを選ぶ?判断のチェックリスト
次の質問に答えていくと、向いているルートが見えてきます。
- 現在の英語力はどのくらいですか。IELTS 7.5相当まで伸ばす時間と意欲があるなら学士ルートが視野に入ります。まず働きたい・英語はこれから、という段階なら専門レベルから始めるのが現実的です。
- 使える予算と期間はどのくらいですか。学士ルートは専門レベルの2〜3倍の学費がかかります。
- 年齢はどうですか。ポイント制は年齢による点数差が大きく、学士ルートは修了までに時間がかかります。逆算した計画が必要です。
- 日本での学歴・職歴は活かせますか。4年制大学卒なら大学院レベルの教員養成課程、保育の実務経験があるなら単位認定の可能性があります。
- スポンサーしてくれる職場を探せそうですか。専門レベルルートの永住は雇用主指名が本線です。就労環境や地域も含めて考える必要があります。
- 地方(Regional)での就学・就労も検討できますか。地方就学の加点や491・州指名は、どちらのルートでも効いてきます。
よくある誤解
関連ページ
SUBCLASS 485 卒業後に働くためのビザ 専門課程(VET)と学士(Higher Education)で条件と滞在期間がどう違うのかを整理しています。 | |
190 / 491 州ごとに違う要件 州指名の加点、対象職業の考え方、地方(Regional)での就学・就労との組み合わせを解説しています。 | |
SUBCLASS 482 雇用主指名の入口 保育施設に雇われて永住を目指す場合の本線となるビザです。要件と186への移行を解説しています。 |





